どうもTORAです。
Metaが新しいAIモデル「Muse Wonder」を出したので、どうやって使うのか、スマホアプリはあるのかを調べていました。App Storeを見てみると、Museというアプリは見当たりません。出てくるのは「Meta AI」です。名前は似ていますが、調べてみるとこの2つは別のアプリでした。
この記事は、Metaの公式発表、開発者向けドキュメント、ストアの掲載情報をもとにした紹介です。実際に使ってみたレビューではありません。情報は2026年10月14日時点のものです。
iPhoneで使える? App StoreのMeta AIとMuseは別のアプリ
まず、日本のApp Storeにある「Meta AI」。デベロッパはMeta Platforms, Inc.で、Meta公式のアプリです。ストアの説明文には、Meta AIは「Meta Superintelligence Labsが開発した新しいモデルファミリーの第一弾、Muse Spark」を基盤にしていると書かれています。Muse SparkはMetaが4月に発表したモデルで、今回のWonderより前のものです。説明文には、一部の機能は特定の国と言語でしか使えないこと、段階的にリリースされる場合があることも書かれています。
一方の「Muse」は、Metaが9月に発表した一般向けのパーソナルAIエージェントです。米国のApp Storeには「Muse from Meta」として掲載されていて、iOS 18.0以上が対象。Google Playにも米国向けの掲載があります。ただ、9月9日に出たMetaの日本語の発表には「日本での提供については現時点で未定」とあり、その後の英語の発表でも提供地域は米国とカナダになっています。10月14日に、米国と同じアプリIDのページを日本のApp Storeで開いてみると、ページが見つからない状態でした。
App StoreでMuseが出てこないのは、探し方が悪いわけではなさそうです。とはいえ、ここで分かるのは「確認した時点で、日本のApp Storeには出ていなかった」というところまで。AndroidやWeb版のmuse.aiが日本のどのアカウントでも使えないのかまでは確かめていません。
もう一つ、Museアプリがあるからといって、すぐにWonderが使えるわけでもありません。10月12日のWonderの発表では、MuseでWonderが使えるようになるのは「近日、まず有料会員から」とされています。日本で入れられるMeta AIアプリでWonderが使える、という記載も見つかりませんでした。
iPhoneで確かめるなら、App Storeの「Meta AI」でデベロッパがMeta Platforms, Inc.になっているかと、説明欄にどのモデルの名前が書かれているかを見るのが早いと思います。Museについては、日本語の公式発表やストアの掲載で、提供状況が更新されていないかを確認するのが確実です。
Muse Wonderは何が新しいのか
同じ「Muse」が付いていても、指しているものがそれぞれ違うので、先に整理しておきます。
- Muse Wonder/Muse Wonder Full:10月12日に発表されたAIモデル
- Muse:一般向けのエージェント。アプリ、Web、WhatsAppから使う
- Muse Code:PCのターミナルで動く開発用のエージェント
- Meta Model API:開発者が自分のアプリから呼び出す、従量課金の入口
- Meta AIアプリ:日本のApp Storeにある、Muse Sparkを基盤にした別のアプリ
Metaは今回のWonderをフロンティアモデルと位置づけています。ここでいうフロンティアモデルは、Metaがいちばん高い能力を狙って作ったモデル、という意味です。研究ブログでは、新しい点としてActive MemoryとActive Focusの2つが挙げられています。Active Memoryは、過去の会話から大事なことを覚えておいて、今の作業に関係するところを引き出す力。Active Focusは、長い作業の途中でうまくいかなくても別の方法を試し、エラーから立て直しながら目標まで続ける力です。必要なら確認を求め、重要な操作の前には声をかける、という説明もあります。Metaは、一回の回答よりも、時間のかかる作業を続けることを重視したモデルとして説明しています。
ただ、これはモデルの能力の話です。APIでWonderを呼んだだけで、利用者ごとの記憶をずっと保存する仕組みや、24時間動き続ける環境、どのサービスに何を許可するかの管理までそろうわけではありません。一般向けのMuseの場合、そこを製品側が受け持っています。日本語の発表によると、Museはクラウド上の専用の仮想マシンで動き、アプリを閉じても作業を続けます。接続するアプリと許可する範囲は利用者が選び、メールの送信や購入の前には確認があり、操作の履歴も見られます。Muse Codeにも、記憶をMarkdownのファイルとして持たせる仕組みがあります。APIで自分のエージェントを作るなら、こうした部分は自分で用意することになります。
開発者向けのモデル一覧によると、Wonderの入力はテキスト、画像、動画、音声、PDF、出力はテキストです。コンテキストウィンドウは1,048,576トークン。コンテキストウィンドウは、一度のやり取りでモデルが扱える文脈の量の上限で、指示文だけでなく会話の履歴や添付した資料もここに入ります。トークンと文字数の対応は決まっていないので、日本語で何文字分とは言えません。1回の回答の長さの上限とも別のものです。Wonderは今はプレビュー段階です。
画像を作るのは別モデルのMuse Imageの役割で、Wonder自体は画像を出力しません。手元のPCで動かせる配布モデルとして載っているのはMuse Glimmerという別のモデルで、確認した範囲ではWonderの重みは配布されていません。
Fullは、Wonderの能力を高めた上位版です。使える入口も違っていて、通常のWonder(APIでのIDはmuse-wonder-1.0)はAPIとMuse Codeの両方で使えますが、FullはMuse Codeの月額プランのうちPower UsageとMaximum Usageだけで、APIには出ていません。WonderのAPIで推論の強さを最大のmaxにしてもFullにはならない、とドキュメントにわざわざ書いてあります。
ベンチマークの数字はどう読めばいいか
Metaは、個人や仕事のエージェント作業、記憶、コーディングで「最高水準」の結果だとしています。研究ブログからリンクされているモデルカードには比較表があって、相手はClaude Fable 5.1、GPT-6 Astra、Claude Opus 5.5です。
例えば、長い実装課題を解くDeepSWE 1.1では、Wonderが78.8、Fullが79.0で、比較相手の3モデルは67.4〜74.2でした。一方、PCの操作を測るOSWorld V2.1の部分点では、Fullの78.4に対してOpus 5.5が81.8、Fable 5.1が80.7と上回っています。第三者のArtificial Analysis Intelligence IndexでもFullは56で、Opus 5.5の58より下です。全部の項目で勝っている表ではありません。
測り方にも注意が要ります。この表は、Meta社内での測定、第三者の測定、他社が公表した値が混ざっています。長期の開発を測るSWE-Marathonでは、各モデルが動いているエージェントの環境(CodexやClaude Codeなど)がそろっておらず、同じ条件で比べたものではありません。記憶力を測るMemoryBenchはMetaの社内評価です。推論の強さも基本は最大設定なので、普段の設定で同じ数字が出るとは限りません。日本語での仕事の成功率も、この表からは分かりません。
こうした条件をふまえると、この表で確認できるのは、長い開発課題ではMetaの掲載値が比較相手より高く、PC操作や総合指標では上回っていない項目もある、というところまでです。
使い方は3つ:ブラウザ、Muse Code、API
日本のApp StoreではMuseアプリを確認できなかったので、ここからはWonderを指定して使える開発者向けの入口を順に見ていきます。
一番手軽なのは、Meta Model APIのダッシュボードにあるPlaygroundです。Chatタブを開き、設定欄のModelでモデルを選んで、メッセージを入れてSubmitを押す。チャットと同じ感覚で、コードを書かずにモデルへ質問できます。推論の強さの調整やファイルの添付もできます。アカウントの登録は必要です。確認した範囲では、無料でどこまで使えるかは書かれていませんでした。Modelの一覧にWonderが出ているかどうかが、まず確かめるところになります。Fullは出てこないはずです。
開発者向けのもう一つの入口がMuse Codeです。PCのターミナルで動くコーディング用のエージェントで、プロジェクトのコードを読み、計画を立て、編集やコマンドの実行までやります。最初から承認の確認とOSのサンドボックスが有効になっています。公式の手順では、macOS/Linuxは1行のインストールコマンド、WindowsはPowerShell用のコマンドで入れます。インストール後にプロジェクトのフォルダでmuseと打つと、ワークスペースを信頼するかの確認と、ブラウザでのサインインかAPIキーの入力を求められます。
注意したいのが、設定のドキュメントでは初期のモデルがSparkのバージョン1.2になっている点です。Wonderを使いたいなら、/modelsで切り替えるか、起動時に--modelで指定する必要があります。インストールしただけでWonderが動いている、とは思わないほうがよさそうです。
自分のアプリやツールから呼ぶなら、APIです。ダッシュボードのAPI keysからキーを作ります。OpenAIのSDKと互換になっていて、接続先をhttps://api.meta.ai/v1に変え、モデルIDを指定すれば呼べる作りです。AnthropicのMessages形式にも対応しています。
下のコードは、公式のQuickstartにあるSparkの例を、WonderのモデルIDに置き換えたものです。説明用で、実際に動かしてはいません。
import os
from openai import OpenAI
client = OpenAI(
base_url="https://api.meta.ai/v1",
api_key=os.environ["MODEL_API_KEY"],
)
response = client.responses.create(
model="muse-wonder-1.0",
input="この文章の要点を日本語でまとめてください。",
)
print(response.model_dump_json(indent=2))
自分のアカウントで使えるモデルは、モデル一覧のAPIで確認できると公式に書かれています。
日本から使えるかについては、APIの地域ポリシー(10月12日更新)を見ました。日本は利用禁止地域の一覧に入っていません。ただし同じポリシーに、Metaがアクセスを有効にした地域でしか使えないとも書かれています。一覧にないことは、日本のすべてのアカウントで使える保証にはなりません。VPNなどで地域の制限をくぐるのは規約で禁止されています。
料金:Muse Codeの月額とAPIの従量課金は別物
Muse Codeの月額プランは4つです(米ドル)。
- Everyday Usage:月5ドル。Muse Spark、Muse Wonder、Muse Imageが使える
- High Usage:月15ドル。Everydayの内容に加えて利用量が多い
- Power Usage:月50ドル。ここからWonder Fullが使える
- Maximum Usage:月200ドル。Powerの内容に加えて利用量がいちばん多い
上のプランほど使える量が増えますが、どのプランにも上限があって、使い放題ではありません。上限に達したら、上のプランに変えるか、上限が戻るのを待つことになります。使える量は後で書くContributor modeのオンとオフでも変わりますし、サブスクリプションの説明には、特典や利用可否は地域によって変わることもあり、契約前の画面で表示されると書かれています。それと、月額で使えるのはMuse Codeの中だけです。サブスクリプションの資格情報はMuse Code専用で、自分のアプリ用に追加で作ったAPIキーは従量課金になります。月額を払えば自作アプリからも使い放題、という仕組みではありません。
APIのWonderは100万トークンあたり、入力4ドル、キャッシュされた入力0.20ドル、出力20ドルです。長いコンテキストでも割増はありません。Web検索を使うと、1,000回あたり2.50ドルが別にかかります。
入力したデータはどう扱われるか
これは使う前に確認しておいたほうがいいところです。Muse Codeの月額プランは、初期設定がContributor modeになっています。送ったプロンプト、コード、ファイル、AIの回答を、Metaが将来のモデルの学習に使っていい代わりに、利用量が増えるという仕組みです。/settingsでいつでもオフにできて、オフにした後の内容は学習に使われません。ただ、利用量も変わります。公式のヘルプでは、Contributor modeに機密情報や個人情報を送らないようにと明記されています。
オフにした状態はStandard modeと呼ばれ、内容が学習に使われません。ただ、学習に使われないことと、データが保存されないことは別の話です。保存しない設定はZero Data Retention(ZDR)という別の機能で、条件を満たした組織に対して、Metaが個別に有効にします。画面から自分でオンにはできません。ZDRの下ではWeb検索やファイルのアップロードなどが使えなくなりますし、規約違反の疑いがある入出力は最大2年保存されるなど、ZDRでも残るデータがあります。
APIのWonderは、Standard modeでしか提供されていません。SparkのようなContributor版がないので、APIから呼ぶ限り、内容は学習に使われない扱いです。一般向けのMuseについては、9月の日本語の発表に、学習をオプトアウトできることと、利用者だけが鍵を持つ暗号化の仕組みを「本年後半」に導入する予定であることが書かれていました。今回、その後の実装状況までは確認できていません。
整理すると、App StoreのMeta AIはSparkを基盤にした別のアプリで、Museは日本のApp Storeでは確認できず、MuseへのWonderの導入もこれからです。Wonderを指定して使える入口として公式に書かれているのは、Playground、Muse Code、APIの開発者向けの3つで、日本のアカウントで使えるかはそれぞれの画面で確かめることになります。Meta AIアプリやMuseにWonderがいつ来るのかは、まだ分かりません。
